人間が社会の中で生きていく上で、もっとも大切な基本能力は、コミュニケーション能力です。その能力を養うもっとも身近な活動の場が、「家」にはあります。それは子どもとのコミュニケーションだったり、夫婦・家族とのコミュニケーションだったりします。しかし戦後、核家族化が進み、「nLDKプラン」と呼ばれる機能分離型の間取りが普及するとともに、家族のコミュニケーションも分離されてしまいました。例えば、子どもが学校から帰ってきたときに、子どもの顔(その日の様子)を見ることもないまま子ども部屋に直行できるような間取りになってはいませんか?もともと日本の民家には、「部屋」という概念は存在しませんでした。伝統的な「田の字型プラン」は、それぞれの和室を廊下を介せずに隣接し、ふすまや障子をはずせば一つの空間になります。古民家には、玄関や台所、居間といった役割を担った「土間」があり、家族や地域の人々とのコミュニケーションがそこにはありました。家庭内暴力や親の離婚、昨今の若年層の犯罪などをみるたびに、一番身近な「家」の中でのコミュニケーションが希薄になっているように感じられて仕方ありません。子どもたちにとっても、夫婦・家族にとっても、「おはよう!」「行ってきます!」「ただいま!」「おやすみなさい!」が元気に言える間取り、今だからこそ見直すときです。